人間関係や健康、睡眠そしてお金など幸せに関わる要素はたくさんあるものの、そのなかでも多くの人が重要視しているのは「お金」ではないだろうか。
しかしそれは大きな勘違いであり、お金がなければ幸せになれないという呪縛こそが、人々を不幸にしているとぼくは考えている。
幸せになりたいのなら、なにが幸せをもたらすか知らなければいけない。
幸せに関係のないものを必死に求めていても意味がない。お金はまさにそういった意味のないものである。
お金があるのに不幸そうにしている人
お金がない人だらけの高校
ぼくの高校は就職に強いと評判だったため、なにかとワケありな生徒が集まってきていた。
聞いたものの一部をあげると、勘当・離婚・DV・親の自殺など。ほかにも親が学費*1や修学旅行の費用を払ってくれないという話も聞いたことがある。
ぼくはごく普通の一般家庭だったため、そんな話をきいて自分は恵まれているんだなと幸せに感じていた。
お金持ちだらけの大学
大学に入るとその環境は一変する。入学したのは、いくつもの中高一貫校を抱えている関西の私立大学。世間からみればかなり恵まれた家庭の人が集まっている(本人がどう思っているのであれ)。
彼らの両親の職業は、医者・弁護士・税理士・大学教授・銀行マン。そうそうたる職業が並ぶ。そして中小企業の経営者は珍しくない。大企業も少々。
こんな環境にいるとぼくは自分が不幸なのではないかと思えてくる。奨学金を借り、仕送りはなし、みんなの半分以下の家賃。
しかし考えてみると不思議である。家庭環境は一切変わっていないのに、周囲にお金持ちが増えただけで自分が貧乏であると感じ、不幸であると思い込んでしまっていたのだ。
お金があっても不幸にはなる
大学入学してしばらくはコンプレックスを抱えたまま生活していたが、友人をみてあることに気付く。
その友人はとてもネガティブでちっぽけなことで深刻な悩みを抱え、不幸だと言っているのだ。君の住んでいる広い部屋に比べればちっぽけなもんじゃないか、とぼくは思った。
結局、どんなに親からお金をもらえても不幸な人は不幸なのだ。父が自殺した友人*2よりも、広い部屋に住んで仕送りもたっぷりもらえる友人のほうが不幸になることだってある。
お金は確かに重要だ。しかし、その存在が必ずしも人を幸せにするとは限らないことをぼくは悟った。どうやったらお金がある友人より幸せになれるか、お金があるのに不幸な人を幸せにするにはどうしたらいいのかを考えるようになった。
自分よりお金持ちはいくらでもいる
ぼくの体験からわかるのは、自分よりお金持ちはいくらでもいるということである。ぼくは高校では「お金持ち」だったが大学ではそうではなかった。
そしてお金に関していえば、ぼくは高校では幸せ、大学では不幸を感じていた。
イギリスのウォーリック大学では、周囲よりどれだけお金を持っているかが、幸せに大きく影響するという研究を発表している。
「いくら稼いでいるか」より「周囲と比べて稼いでいるか」の方が重要
http://gigazine.net/news/20100323_richer_than_your_neighbour/より
しかし先ほども述べたように、自分よりお金持ちはいくらでもいる。
ぼくの場合、高校から大学へは偏差値的には大きくステップアップした。それなのにステップアップした先にお金持ちがたくさんいたら不幸になってしまう。そんなばからしいことない。
結局、お金を気にして誰かと比較しているうちは一生幸せになれないのである。
お金は「比較」から逃れられない
幸せになるためには他人と比較しないことが重要である。比較するのではなく、自分と向き合って自分の価値を肯定してあげることが一番大切である。
しかしお金を気にしていると、一生他人と比較し続けることになる。
人は他人の年収を知りたがる。なぜなら周囲と比較しないと自分がお金を持っているかどうか認識できないからである。
いくら年収が1000万円だったとしても、平均年収が1500万円だったら幸せになれない。平均が500万円であることを認識して、はじめて自分が幸せであると感じるのだ。
このようにお金は「比較」から逃れることができない。
お金がもたらす幸せには限界がある
2010年にノーベル経済学賞を受賞した心理学者ダニエル=カーネマンと経済学者アンガス=ディートンは「75,000ドル(約900万円)以上の年収を得たとしても幸福指数は上がらない」という内容の論文を発表している。
幸せのためにまったくお金が必要ないといいたいのではない。お金がもたらす幸福には限界があるということだ。
年収900万円に達していない人はお金で幸せになれると考えるかもしれない。だが年収900万円以下なら収入が多いほど幸せであるというわけではない。
ぼくの知り合いには年収150万円で幸せに生活している人がいる。年収500万円で自分が不幸だと感じている人はいくらでもいる。
時間や人間関係など、お金以外のたくさんの要素が組み合わさって人の幸せは形作られるのであって、お金があれば幸せになれるというのは間違いである。
幸せになるための要素としてのお金は、世間が思っているほど絶対的な存在ではない。
もっと自分を幸せにするものを見つけよう
皮肉なことにお金があれば幸せになれると信じている人はお金のない人である。お金のある人は、お金以外のものが幸せになるために重要であることを認識し、常にお金以外のなにかを求めている。
ハーバード大学によれば、年収が100万円増えても幸福度は2%しか変わらないという調査結果から、研究者は「幸せになりたいなら、収入を増やすよりも、よき家族や友人との関係を強める方が効果的」だと結論づけています。
http://lrandcom.com/job_is_everythingより
幸せになりたいのなら、なにが自分を幸せにしてくれるのか正しく認識しなくてはいけない。
そのとき、お金という間違った目的を持ってしまっては幸せになることはできなくなる。お金は幸せになるための目的ではなく手段なのだ。
お金の呪縛から逃れ、人間関係や自由な時間など、本当に必要なものに注目することが、幸せへの第一歩になる。
お金は私たちにとって、人生のほんの「一部」でしかないことを忘れてはいけない。