あの社員はワークライフバランスをどのように勘違いしているのか

仕事
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日本でも最近注目され始めたワークライフバランス

ブラック企業や過労死といったインパクトの強い言葉の対極に位置するものとして上げられることが多い。

そのためか、ワークライフバランスという言葉が一般に普及するまでの間に、間違った認識や印象を抱き、勘違いをしているケースが見受けられる

この記事の目的は、ワークライフバランスに関して見受けられる勘違いを否定することだ。

そのうえで、ワークライフバランスが本来どのような意味を持って普及したのか、内閣府の情報や日本で初めてワークライフバランスを紹介した本をもとに説明していく。

勘違い①:ワークライフバランス支持派の「私生活を重視するものである」という勘違い

私のような20代前半の若者に特に多い勘違いは「ワークライフバランスは私生活を重視する」というものである。

就職活動中、私の周りには「私はそんなにバリバリ働きたくないから、ワークライフバランスのある会社が良い」と語る人がいたが、ワークライフバランスの意味に即した発言とは言えない。

ワークライフバランスという言葉からしても、仕事と私生活のバランスを取るものなのに、あたかも私生活を最優先できる、残業をしなくても良いという意味に捉えられてしまうことがある。

私生活を重視するわけではないが、日本社会では相対的に私生活重視になる

この勘違いを生み出す原因は、現在の日本社会にある。

現在の日本社会は「働き過ぎ」という見解が多数を占めている。

そのため、日本社会でワークライフバランスの考え方が導入されるということになれば、当然ながら「今よりも私生活に重きを置く」必要がある。

だから「ワークライフバランスを重視する=私生活を重視する」という説明がなされることが多い。

だが、厳密には、ワークライフバランスは仕事との私生活のバランスを取るものであることを忘れてはいけない。

このように「やるべきこと(私生活の比重を重くする)」と「目的(仕事と私生活のバランスを取る)を混合してはいけない

勘違い②:ワークライフバランス否定派の「会社の利益を圧迫する」という勘違い

次に紹介する勘違いは「ワークライフバランスは福利厚生のようなもの」「ワークライフバランスは会社の利益を圧迫する」というものである。

また、そうした勘違いに引きずられて、「ワークライフバランスを求める社員はやる気がない」という印象を持ってしまうこともある。

これは社会に馴染んだ中堅以上の社員が抱いていることが多いと思われる。

最初に紹介した「ワークライフバランスは私生活を重視するものである」と考えている人々の影響もあるだろう。

「ワークライフバランスが大切だから、あまり働きたくない」という偏った考え方をしている若い社員をみた中堅社員がワークライフバランスに対して否定的な印象を持つのはよくわかる

ワークライフバランスは会社に利益をもたらすのが目的である

詳しくは後述するが、ワークライフバランスは会社に利益をもたらす「経営戦略」である。

ワークライフバランスは福利厚生ではなく、会社に利益をもたらすという考え方の転換によって、ワークライフバランスはアメリカの企業に浸透したという歴史を持つ。

勘違い③:ワークライフバランスは福祉的な取り組みである

アメリカでワークライフバランスが普及したのは発想の転換によるもの

ワークライフバランスの歴史において、アメリカ企業での「発想の転換」は非常に大きい。

アメリカ企業でも当初ワークライフバランスは普及しなかった。

ワーク・ライフ・バランスの施策は揃ったものの,(中略)企業にとっては負担でしかないという捉え方が一般的であったため,従業員の利用は停滞し,会社側の取組も次第に後退していった。

平成19年版男女共同参画白書 | 内閣府男女共同参画局

原因はワークライフバランスについて以下のように考えていたからである。

  • ワークライフバランスは従業員に対する「福祉的」な取り組みである
  • ワークライフバランスは企業に負担でしかない
  • 企業も従業員も積極的に使うべきではない

しかし、ある研究をきっかけに、ワークライフバランスは「企業が業績を伸ばすための経営戦略の一部*1になった。

現代であればある程度受け入れられると思うが、大まかには下記のようなメリットが得られると推測できる。

  • 離職率の低下→採用・教育コストの低下、離職率を下げるための人件費増加抑止
  • 優秀層(特に若手・システムエンジニア)の獲得
  • 会社の社会的評価向上

そして、実際にワークライフバランス施策を実践した企業は業績を伸ばしていった。こうした経緯によって、アメリカの企業でワークライフバランスは普及したわけである。

ワークライフバランスは企業が業績を伸ばすための経営戦略である

アメリカで普及しているワークライフバランスの考え方が理想的な姿だとすれば、今回紹介した考え方はまさしく「勘違い」であることがわかる。

それが、この記事で最も強調したいことである。

ワークライフバランスは企業の業績を伸ばすための経営戦略であるのだから、「仕事をあまりしなくても良い」「私生活のみを重視できる」という意味はない

私生活を大切にするものの「やらなければいけない仕事があるにも関わらず、絶対に残業をしない」という考えは、ワークライフバランスの考え方に反している

一方で「正しいワークライフバランス」を重視している社員は、決してやる気がないわけではない。

むしろ「会社に利益もたらす経営戦略」を実践しているのだから、尊重されるべきである。

実際、SCSKや伊藤忠など、ワークライフバランスを重視することで企業の業績を向上させてきた事例が日本でも出てきている。

まとめ:勘違いをなくさなければ正しいワークライフバランスは浸透しない

社内全体が勘違いをなくさなければ正しいワークライフバランスは浸透しない。

会社として、ワークライフバランスは「このようなものである」という共通の見解を持ち、それをトップが発信することが、最初の一歩になるのではないだろうか。

ワークライフバランスは「キレイごと」として捉えられがちであるから、利益をもたらすためのものだと強調することが望ましいかもしれない。

勘違いをした状態でワークライフバランスという言葉の権力が強くなると、ぬるい会社になったり、お客様への貢献度が低くなったりする問題が起きてしまうだろう。

しかし、だからこそ、他社が簡単に模倣できない理想的な経営戦略としての価値が、ワークライフバランスにはあると私は考えている。

今回紹介した内容は、『会社人間が会社をつぶす―ワーク・ライフ・バランスの提案』に詳しく書かれている。

日本で初めてワークライフバランスを取り上げた書籍だとも言われており、ワークライフバランスの本来の意味や歴史を知るうえでとても役立つ。

ワークライフバランスを浸透させようとすると社員の反発やぶら下がり社員の増加を招くことがある。この場合は自社のポジションをはっきりとさせることが基本的な考え方になる。

これについては下記の書籍が非常にわかりやすく解説している。

「辞める人・ぶら下がる人・潰れる人」さて、どうする?
クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
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*1:http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h19/zentai/danjyo/html/column/col01_00_03_01.htmlより引用

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