【書評】『SINGLE TASK』はシングルタスクでの仕事術を教えてくれる本

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『SINGLE TASK 一点集中術――「シングルタスクの原則」ですべての成果が最大になる』はマルチタスクを否定し、シングルタスクで仕事をすることを薦める本です。

仕事の生産性をあげるには、いかに複数の仕事を効率的にこなすか」が注目されがちです。

しかし、本書はタイトルでもわかるようにマルチタスクを否定し、シングルタスクを推奨しています。その珍しさから、本書を手に取りました。

著者はデボラ・ザック氏。コーネル大学ジョンソンスクール(経営大学院)の客員教授を15年以上にわたって務めている人物でもあります。

本書は単に著者の個人的な仕事術が語られているだけではなく、神経科学の科学的根拠などをもとに論を展開しており、参考文献も明記されています。

ですから、ただの根拠のない自己啓発本ではなく、「科学的根拠に基づいている」「(妄信的に信じるべきではないが)学者の書いた本である」という点でも価値があるでしょう。

ただし、この本の本質的な話は前半で終わり。後半は相性がよいと感じれば読み続けるという具合でよいでしょう。

マルチタスクよりもシングルタスクで仕事をしよう

マルチタスクはそもそもできない

本書ではまず「そもそもマルチタスクは人間にはできない」と主張します。

人間の脳は2つ以上のことに集中することができません。だから、我々がマルチタスクだと思ってやっているそれは「タスクスイッチング」であるというのです。

しかし、多くの人が実感しているように、マルチタスクは効率が良い・頑張っている・要領が良いというイメージがあるのも事実。

このマルチタスクに関する肯定感を否定し、科学的根拠に基づいてシングルタスクを信じるようになれるかが、この本を読むうえでのポイントとなります

スタンフォード大学の神経科学者エヤル・オフィル博士は「人間はじつのところマルチタスクなどしていない。タスク・スイッチング(タスクの切り替え)をしているだけだ。タスクからタスクへとすばやく切り替えているだけである」と説明している(p.40)。

シングルタスクのほうが効率がいい

次にマルチタスク(実際はタスクスイッチング)がいかに生産性を低下させるか、シングルタスクがいかに生産性を向上させるかについて主張していきます。

  • タスクを切り替えるときに人間には一瞬の空白時間が生まれる。だからタスクの切り替えは少ない方がいい
  • 優先順位をつけることができない複数の要求にさらされると、脳は圧倒され、うまく機能しなくなる(p.77)

これ関しては、マルチタスクはダメだという主張が特に説得的に書かれていた印象です。

下記記事で詳しく説明しているので、興味のある方はぜひ参照してみてください。

関連記事:マルチタスクができない根本的な理由。人間は「タスクスイッチング」しかできない。

どうやってシングルタスクを仕事に馴染ませるか

こうした仕事術の最大の問題、どうやって実践するかがこの本の多くを占めています。

例えば、シングルタスク実践するには、相手が話しかけてきたときに「ちょっと待って」と相手の行動を遮ることが必要です。こうした行動はどうしてもやりたくないと思ってしまいます。

しかし、何か作業をしながら相手の話を聴くことは本当に相手のためになるでしょうか。また、相手は自分だけに集中してくれているときと、メールをチェックしながら話をきいているとき、どちらのほうが「自分は尊重されている」と感じるでしょうか。

こうした点も加味して考えることで、実際に職場でも少しずつシングルタスクを導入できるようになっていくでしょう。

このような考え方が本書では多数紹介されています。本の後半は科学的根拠に基づいてというよりは、著者の仕事術の紹介という内容になります。

科学的に間違った仕事をしていないか

間違っていたら明確にわかるものと違い、「仕事の仕方」は間違っていてもなかなか気づくことができません。また、論理的に考えているようにみえて、実は頑張っている風に見せたい、嫌われたくないといった感情をもとに仕事の仕方が決まることも多くあるでしょう

だからこそ、個人的な仕事術ではなく、科学的根拠のある主張を参考にすることは大きな意味があります。

そういった意味では、本書の前半部分にあるマルチタスクを否定し、シングルタスクを推奨するという部分は、特に読むべき文章だと言えるでしょう。

ただし、仕事の仕方はその人の仕事観・人生観に大きく影響しています。他者にこうした仕事の仕方を教えるときには、科学的根拠があったとしても相手の尊厳を傷つけないように配慮する必要があります。

(ワーク・ライフ・バランスの議論は特に仕事観・人生観の影響が大きいと働いていて感じることが多い)

『SINGLE TASK』の読むべきポイント

  • マルチタスクという一般に良いと信じられている概念を否定し、シングルタスクを推奨しているところ
  • 科学的根拠を持って「人間はマルチタスクができない」と主張している点

本書はそれほど分厚くもなく、内容も決して難しくないため、気軽に読める根拠のある自己啓発本だといえます

仕事の仕方について考えていて、シングルタスクという言葉に惹かれる方は、ぜひ読んでみてください。

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