フィードバックは良い企業・組織・チームを構築する上で絶対に欠かせない要素の一つです。
この言葉は組織でよく使われる要素であるにも関わらず、そのあり方を誤解している方も多くいるといえます。
フィードバックは非常に重要なものであるにも関わらず、その正確な意味、重要性が認識されていないという現状があるのです。
こうした背景のもと、フィードバックの意味と具体的な方法について説明していきます。
フィードバックは組織においてよく使われる言葉です。にもかかわらず、誤解されていることが多く,きちんと実践されていることはほとんどありません。*1
1.フィードバックの意味とは
『チームワークの心理学』では、フィードバックについて「ある特定の行動に対する明確な反応を繊細かつ建設的な方法で示すこと」と述べられています。
つまり、行動による結果を、行動した本人に具体的に教えてあげることといえるでしょう。
フィードバックとは「アドバイス」「意見」であると考えてもそれほど問題はありませんが、以上の定義は意識しておく必要があります。
多くの場合、みなさんが知らないことは
- ①フィードバックは行動やその結果に具体的に注目すること
- ②フィードバックは本人に直接伝えるもの
- ③批判ではない
という3点です。
それでは具体的に1つずつ説明していきましょう。
2.フィードバックに関する誤解と本当の意味
2.1.フィードバックは行動やその結果に具体的に注目すること
『チームワークの心理学』ではフィードバックを与えることを以下のように定義しています。
フィードバックを与えるということは,メンバーの行動やその行動の結果に、具体的に注目することです。*2
極端な話をすれば、「よかったよ!」といって頭を撫でることはフィードバックとはいえません。
行動について具体的に触れていないからです。
うまくいった時でも、その人はどんな行動をして、どんな良い結果をもたらしたかに注目してください。
例:具体的なフィードバック
悪い例として「キミ、本当によかったよ。これからも頑張ってくれ」というフィードバックをあげます。
良い例は
「君が資料に顧客の声を入れようと言ってくれたおかげで、多くのお客さんが安心して契約してくれて、契約数が伸びたよね。これはよかった。これからも頑張ってくれ」
といった具合でしょうか。
どんな行動をしてどんな結果がもたらされたのか。それを具体的に相手に伝えてあげることがフィードバックなのです。
2.2.フィードバックは本人に直接伝えるもの
フィードバックは本人に伝えるものです。
「当たり前のことじゃないか」と思うかもしれません。
しかし、これを単純に理解してしまい、意識をしないために、適切なフィードバックができなくなっていることがあります。
よくあるのが、グループにフィードバックを与えるだけで終わってしまうこと。
グループにフィードバックを与えるのは大切なことですが、そのグループがもたらした結果は誰の行動によるものなのかを明確にしなければいけません。
例:本人に伝えるフィードバック
チームにAさん・Bさん・Cさんがいるとします。
チームのもたらした結果に対して、それぞれのメンバーがどのように関与したかもフィードバックしなければいけません。
でなければ、Aさんはなにをしたことがよかったのかわかりません。
「チームはこんな結果を出したけど、これはAさんが徹夜で資料を作ってくれたこと、Bさんが他社に出向いてきたことが影響しているよね。Cさんのアイデアはよかったけど、今回の成功にはそれほど影響していないかな」
こんな具合で、それぞれのメンバーがどのように結果に関与したかもフィードバックするとよいでしょう。
特にチームが悪い結果をもたらしたとき、グループにしかフィードバックを与えないと、誰もが「俺のせいではない」と思ってしまいます。
言いづらくても何が原因だったのかを明確にすることは大切なことです。
2.3.フィードバックは批判ではない
最後に、上司だけでなく部下にも知っておいてもらいたいフィードバックの知識として、フィードバックは批判ではないということがあげられます。
フィードバックはあくまでもフィードバックの対象である人を成長させ、チームのパフォーマンスを上昇させるために行われるのです。
決して「お前は駄目だ」と伝えるためではありません。
ですから、部下にとってフィードバックは「楽しみ」になるよう工夫をする必要があるでしょう。
フィードバックの機会が苦痛であるのならば、上司がフィードバックだと思っているそれはフィードバックではありません。
特に自分を権威づけるためにフィードバックを行うリーダーがいますが、できれば今すぐにそのリーダーのもとから去るべきです。
フィードバックはチームのパフォーマンスを強め,改善することを目的として行われるべきです*3。
個人の考えとしてではなく、チーム全体として「フィードバックは批判ではない」という考え方を浸透させることで、フィードバックを行いやすくなるでしょう。
3.フィードバックの重要性と知っておきたいこと
3.1.フィードバックが部下の満足度を高める
上司が部下にフィードバックを与えることは、想像以上に重要なことです。
『チームワークの心理学』には以下のようなことが書かれています。
ナイジェル・ニコルソンと私が2000人以上のイギリスのマネージャーを対象に行った調査では、多くのマネージャーがポジティブなフィードバックをもらえないといって,上司を批判していました*4
「自分で反省できるだろう」「部下はフィードバックを嫌がる」と考え、フィードバックをしないことがあるかもしれません。
しかし、それが部下の不満の原因になることもあるということです。
また、自分はフィードバックを与えているつもりでも、部下はフィードバックを与えられていないと感じているケースがあります。
これはフィードバックが具体的ではないのが理由です。
通知予表のように「君は4だね」と4段階評価でフィードバックをしていては、具体的とはいえません。
さらにフィードバックを意識させる方法として、フィードバックをするときに「今から仕事に対するフィードバックをする」と明言する方法もあげられます。
こうして、明示的にフィードバックを行うことで、フィードバックのメリットを効果的に受けることができるのです。
3.2.フィードバックについて知っておきたいこと
フィードバックについて知っておきたいことを簡単に3つまとめておきます。
3.2.1.目標とフィードバックは相性が良い
目標を定めておくと、フィードバックの際に目標を達成できているかという具体的な評価を行うことができます。
フィードバック毎にそれができているか確かめ、その達成度合いに応じて新たな目標を定めるとよいでしょう。
なお、このとき目標は具体的・定量的である必要があります。
3.2.2.フィードバックはできるだけ早く
行動を変えたり強化したりする上でフィードバックが最も効果的になるのは,対処となる行動の直後になされたときです*5。
フィードバックは結果が出てからすぐにするほど効果的といえます。
「今年の振り返り」よりも「今日の振り返り」の方が好ましいというです。
3.2.3.ポジティブなフィードバックのほうが好ましい
行動を変容させるためには、ネガティブ・フィードバックよりもポジティブ・フィードバックのほうがはるかに効果的です*6。
ポジティブな意見のほうがネガティブな意見よりも、ずっとその人のためになるということです。
フィードバックと称して、部下をいじめるだけの上司があらゆる意味でダメだということがわかります。
また、一般的に「反省」というと、ネガティブな面に着目するのだと意識しがちです。
しかしながら、「反省」という行動にはポジティブな面に着目するという意味も当然あります。
ポジティブなフィードバックが重要であることを理解すれば、「反省」の際もポジティブな面について考えようという意識が生まれるはずです。
4.さいごに
フィードバックの本当の意味と重要性、知っておきたいことについてお話しました。
この記事の内容は、以下のようにまとめることができます。
- フィードバックとは行動による結果を、行動した本人に具体的に教えてあげること
- フィードバックは「具体的に」「本人に直接」伝える
- フィードバックは批判ではない
- フィードバックを部下に与えないと不満が出る
- フィードバックは「目標を定め」「できるだけ早く」「ポジティブなもの」であるとより良い
フィードバックは企業や組織を効果的に動かすために必要な要素の1つです。
フィードバックの本当の意味を理解し、正しく実践し、より効果的な組織・チームをつくりだしてください。
『チームワークの心理学』はチームや組織に関する基本的な知識が網羅された基本書だといえます。
チームの○○に興味があると具体的に言えず、漠然とチームや組織について興味があるという人は、この学問の概要や、自分の興味を知るためにも読んでみてはいかがでしょうか。