自分らしい生き方をしたいというとき、自分軸という考え方が役立ちます。
その言葉自体を耳にすることは多くないかもしれませんが、意味はそれとなく読み取れるでしょう。
自分がたくさんの判断を求められたり、誘惑を受けたりする中で、常に自分を貫く確固たる価値観によって行動していれば、自分らしく生きることができるはずです。
当然、そうした生き方こそが幸せであり、成功することができると考えている人は多いでしょう。
今回は「自分らしさ」を考えるときの一種のツールともいえる「自分軸」という考え方についてお話します。
自分軸のある生き方とはなにか
自分軸のある生き方をしている人は「ブレずに自分の価値観に基づいて行動できる人」とぼくは考えています。
一言で表すならば「自律的」であると表現できるでしょう。
よく勘違いされがちですが、「自律的」であることと「自分勝手であること」は本質的に異なるのです。
高名な心理学者であるエドワード・L・デシは著書の『人を伸ばす力』で以下のように述べています。
自律性を主張することは、自分だけの世界に浸ることを求めているわけではない。なぜなら、真に自分らしくあるということには、他者の幸福に対する責任を受け入れることも伴うからである*1。
つまり、自分軸を持って生きることとは、ただ自分の価値観を貫き通すだけではなく、周囲の価値観とも折り合いをつけながら自分らしさを追求していくことだといえます。
自分軸があるとどう変わるか
自分軸がある人とない人とでは、本質的にその人間のありかたが変わります。そのいくつかをあげて説明しましょう。
ただし自分軸を確立することは非常に困難で、下記のような変化を得ることもまた難しいことを念頭においてください。
他人と比較しないでも自分の価値を見いだせる
自分軸のある生き方をしている人は、自分はこうあるべきだという確固たる価値観を持っています。
そうした人は、他の人よりもお金がなくても、地位がなくても、物がなくても、その価値観が満たされていれば幸せだと感じるのです。
ですから、誰かと比較しなくても自分には価値があると感じられ、幸せになれます。それは決して強がりではありません。
逆に言えば、自分軸がないのに奇抜な生き方をしている人は、「自分は幸福なはずだ!」と無理に思い込んでいることでしょう。
絶対的な判断基準が生まれる
自分軸というのは自分の確固たる価値観です。変わることはあっても、揺らぐことはありません。
ですから、なにかを判断するときの絶対的な判断基準になります。
ぼくは「自分のやられたら嫌なことは他人にもしない」という価値観を持っています。ですから、なにかをするときに「これを自分がやられたらどうだろう?」と常に考えるようにしているのです。
そして、もし自分が嫌だなと感じたら、その行動は絶対にしません。
このように自分軸はなにかを判断するときの基準になるのです。
もっとも、常に自分軸に従って行動するのは、口で言うのは簡単ですが実行することは非常に難しいものです(ぼくもできていません)。
行動に整合性が生まれ、信頼される
先程述べたように、自分軸は判断基準になります。その確立された判断基準に基づいて行動することができれば、行動に整合性が生まれ、人から信用されるようになります。
企業のケースになりますが『隠れた人財価値』でも「価値観」とその価値観に基づく行動の整合性の重要性について述べられているのです。
どんなによさ気な価値観を掲げていても、それが行動との整合性がとれていなければ、「そのよさ気な価値観はただの建前だろ」と社員に見ぬかれてしまいます。
一方で、その価値観と行動の整合性がとれていれば、「この人は本気でこの価値観を持っている」と社員に思われ、社員は企業のトップを信用し、それに従うようになるというのです。
少し形は異なりますが、個人の場合でも常に人の嫌がることをしないようにしていれば、「この人は絶対に人の嫌がることをしない人だ」と信頼されます。
たまに優しくなったり、利害が絡むと厳しくなったりする人は信頼されません。
自分軸の見つけ方
ではどのようにして、自分軸を見つけ出すのでしょうか。ここでは、ぼくの考えた幾つかの方法についてご紹介します。
自分の過去の成功体験を思い出す
自分の過去の成功体験を思い出し、それらの共通点こそが自分の価値観を体現すると考える方法です。
人を助けたときに成功したと感じたのであれば、自分軸には「人を助けるために生きる」というものをいれてもいいかもしれません。
このように過去の自分を振り返って、自分らしさを感じられたときというのは、一体何が得られたときなのかを考え、それを自分軸とするのです。
自分の将来ありたい姿を想像する
「将来ありたい姿」は「ビジョン」とも言い換えることができます。
ビジョンを明確に意識することは、自分はなんのために生きているのかを意識することと同じです。
自分は将来たくさんの友人に囲まれたいのか、それとも数人いれば満足なのか。都会の真ん中で働く自分がいいのか、田舎で働く自分がいいのか。
様々なことを考えて、それに適した行動基準や価値観を自分軸にするといいでしょう。
ぼくはなにも考えずに流されないという意味で「多数派になりたくない」という価値観を持っています。これはぼくが首都圏から京都に進学したことと相互関係にあるといえます。
価値観を示す本を読む
もっとも定番なのは本を読むなどして、他の人の価値観を自分軸として取り入れることです。
尊敬する人物の価値観を取り入れることは、自分にないような考え方を得ることができるように、他人のが体験して得たものを自分のものにすることができます。
もちろん偏っている自分軸もあるでしょう。そこで最初におすすめしたいのは『論語』です。
そんな古典的な本を……と思うかもしれませんが、儒教的な考え方は日本人には基本的に備わっていて、受け入れやすいものが多くあります。
ぼくの「自分がされたら嫌なことは人にしない」という自分軸は、論語の「己の欲せざる所は人に施すなかれ>」からきています。
論語をいきなりちゃんと読むのは大変ですから、上記の読みやすいものから始めるといいでしょう。ぼくは中学生のときに買って読んでいました。
自分軸をミッションステートメントとして明文化する
スティーブン・R・コヴィーの著書『7つの習慣』には「自分自身のミッションステートメントを書くべき」と述べられています。
ミッションステートメントは、自分軸を明文化したものということができるでしょう。
企業では企業理念として「ミッション」「ビジョン」「バリュー」などが掲げられていますが、これも同じように「企業軸」を明文化したものといえます。
あなたも自分軸を明文化し、常に目の見える場所においておくようにしていかがでしょうか?
自分軸を定めて、それを行動に反映させていくことは困難だといいましたが、明文化することはそれを実現する助けとなるはずです。
- ミッション・ステートメントは、一晩で書けるものではない。深く内省し、緻密に分析し、表現を吟味する。そして何度も書きなおして、最終的な文面に仕上げる。
- 基本的には、あなたのミッション・ステートメントはあなたの憲法であり、あなたのビジョンと価値観を明確に表現したものである。あなたの人生におけるあらゆる物事を測る基準となる*2。
まとめ
- 自分軸は自分らしい生き方のためのツールともいえる
- 自分軸のある生き方をしている人は「ブレずに自分の価値観に基づいて行動できる」
- ただし自分軸を貫くことと、自分勝手であることは別である
- 自分軸があると「他人と比較しない」「判断基準ができる」「信頼される」などの変化を得られる
- 自分軸は「過去を思い出したり」「将来の姿を想像したり」「本を読んだり」して見つけるといい
- ミッションステートメントという形で、自分軸を明文化すると、より自分らしく生きる助けとなる
今回は「自分軸」という考え方をベースに、自分らしく生きることについて包括的に説明しました。
そのためいくつかの本を参照することになり、書き上げるのに非常に時間がかかっています。
しかし、自分らしく生きることについて考えるときの最初のステップとして、今回の内容がおすすめできると思います。