『1440分の使い方 ──成功者たちの時間管理15の秘訣』は日々が忙しいという人に向けて、時間の使い方を教えてくれる本です。
世に出回っている数ある時間管理術の全体像を知るのに最適な本だといえます。
また、タイトルにあるように、本書は成功者たちにインタビューを行い、その共通項から成功法則を見出すというアプローチのもの。
『思考は現実化する』や『7つの習慣』もこうしたアプローチをとっています。
こうした本は、すべてにおいて科学的根拠があるわけではありません。しかし、一人の成功者の持論や経験をまとめたものよりは参考になるかと。
本書は成功者たちの発言を紹介しつつ、研究内容を引用している部分も見受けられます。
1440分の使い方で紹介されるユニークな方法論
ToDoリストはつくるな
本書ではやることをまとめたリスト・ToDoリストは作成するなと主張しています。
ToDoリストは期日が書いてあっても、「この時間にやる」という予定を書かないため、いつまでたっても手をつけられなかったり、未完了のまま放置してしまうことが多いからです。
そこで、ToDoリストではなく、スケジュール表を使い、そこにやるべきことを入れていくべきだといいます。
これによって、タスクの管理はこれまで通り行うことができ、ToDoリストのデメリットを解消することができるのです。
タスク管理の定番ツールであるToDoリストを否定するというのは非常に面白い。
仕事が終わってなくても、「予定」が終わっていればストレスは軽減される
金曜日に仕事を残して退勤すると、仕事を残していることを思い、憂鬱になる人が多いのではないでしょうか。
これを解決する簡単な方法を本書は提示しています。
タスクはToDoリストではなくスケジュール表に入れる。なんと、たったこれだけのことで心が解き放たれ、ストレスが減り、認知能力が高まる。フロリダ州立大学の研究によれば、ツァイガルニク効果(未完了のタスクによって意識的・無意識的に悩まされる現象)は、タスクを達成するための 予定を立てる だけで克服できるという。
ケビン・クルーズ(2017)『1440分の使い方 ──成功者たちの時間管理15の秘訣』パンローリング株式会社 (Kindleの位置No.375-)
パソコンでなくノートでメモを取れ
ぼくは根っからのパソコン党ですが、本書はノートを使うべきと主張します。
最初の実験では、生徒たちにTEDのスピーチを見せてノートを取らせ、30分後それに関するテストを実施した。すると、事実を問う質問に関しては、ノートパソコンを使った学生も手書きの学生も同じ点数だったが、コンセプトを問う質問に関してはパソコン使用者のほうが点数が悪かった。
ケビン・クルーズ(2017)『1440分の使い方 ──成功者たちの時間管理15の秘訣』パンローリング株式会社 (Kindleの位置No.765-)
「だったら、パソコンでメモを取るときの弱点を認識したうえで、パソコンを使えばいいじゃないか」。
上記のように考えましたが、これもダメな様子。
パソコンを使った学生は、鍵となるコンセプトをメモするのではなく、スピーチをそっくりそのまま書き取っていた。その点に気づいた博士たちは、第二の実験で、自分の言葉でノートを取るよう、パソコン使用者に具体的に指示した。しかし結果は同じだった。手書きの学生のほうがメモの内容をよく思い出せたのである。
ケビン・クルーズ(2017)『1440分の使い方 ──成功者たちの時間管理15の秘訣』パンローリング株式会社 (Kindleの位置No.986-)
ポモドーロ・テクニックを使え
ポモドーロ・テクニックは、よく紹介されることがあるため、知っている方も多いでしょう。
25分働いたら、5分休むといった形で、作業と休息を比較的細かい単位で繰り返すことで、生産性の向上を目指す手法です。
本書でも、インタビューや研究内容をもとに、ポモドーロ・テクニックが紹介されています。
人間は本来90分間隔で、集中力とエネルギーがともに最大の状態から、生理学的な疲労状態へ移行する。(中略)そこで、終日90分間隔で水を飲む、歩く、健康的な軽食を食べるといった短い休憩を意識的に取るようシュワルツは提案している。
ケビン・クルーズ(2017)『1440分の使い方 ──成功者たちの時間管理15の秘訣』パンローリング株式会社 (Kindleの位置No.1840-)
やることよりもやらないことを明確にする
なにかをやるためには「やめること」を決めるほうが大切です。
組織の方針を説明したり目標達成のための行動を定めるときに、やめることを明確にすると、やることを決めるよりも具体的にやるべきことが見えてくるとぼくは考えています。
例えば、企業の経営方針で「上場を目指す」「ハードワークを推奨する」よりも「上場は絶対にしない」「残業は絶対にしない」のほうが、企業の行動が具体的に見えるわけです。
『1440分の使い方』の読むべきポイント
- 15以上ある時間の使い方・作り方に関する方法論(章が細かく分けられて、内容は具体的であるため、読みやすい)
- 成功者へのインタビューの内容や紹介されている研究の内容
本書を読んでいて感じたのは、章が細かく分かれていること。多くの場合、それぞれの章で言いたいことが明確であるため、すんなりと頭に入ってきます。
科学的根拠に基づいて、より正確な時間管理をするのならば、さらに探求する必要があるでしょう。
しかし、世に出回っている数ある時間管理術の全体像を知るのに最適な本だといえます。
Kindle版は299円と非常に安いので、気になる方はぜひ。